小島一郎「北を撮る」@青森県立美術館


前の晩から降りだした雪のおかげで、小島一郎を見るのに相応しい天候と風景に恵まれました。
初の大回顧展ということで、200点ものオリジナルプリントに、トランプといわれる名刺サイズのプリントが大量に展示されていました。
9時半の開館と同時に入館して、見終わったのが13時前、3時間半近くかかりました。
 
津軽 or 下北
ちょっと乱暴ですが、彼の作品を大雑把に
・覆い焼きなどの技法を駆使した、中間調の豊かな津軽
・複写用フィルムを用いて、極端なコントラストで表現した下北
に分けるとすれば、
青森に行く前、メディアを通して見ていた分には、インパクトのある下北の作品が気になっていたんですが、
実際に美術館で作品を見て、階調の豊かな津軽の作品に心惹かれました。
 
トランプ
トランプというのは、名刺サイズのプリントを台紙に並べて貼ったアルバムで、
プリントの周囲に"23-14"*1といった番号や、○やレ点や何かしらの文字が書かれてました。
作品を選んだり、プレゼンテーションするのに使っていたようです。
とても勉強になりました。というのは、
プリントは、番号順に並んでいるのではなく似たカットが並んでいたり、同じフィルムから焼きを変えたプリントが並んでいたりしていて、
・並べてある順に見れば、プリント時の試行錯誤や発表する作品を選んでいった過程が
・番号順に見れば、撮影時にどのように対象を切り取っていった過程が見えるようでした。
 
写真界のミレー
今回の副題にもなってますが、
・力強い農民の姿。
・トランプの中に「種をまく人」「落穂拾い」「夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い」を思わせる構図が。
・夕方、家路に向かう農民の姿。(これはミレーというよりバルビゾン派に共通するモチーフか)
・本人も「晩鐘」について発言したことがあり、当然ミレーを知っていた。
と言った点で「写真界のミレー」なんでしょう。
自分は、この回顧展を見ていて彼の作品から「ミレー」との類似性よりも、オリジナリティを感じました。
むしろ、こう表現されることで、特定のイメージを持たれてしまう危険性もあるのではないでしょうか。
 
北海道
納得できる作品が完成する前に、小島一郎はこの世を去りました。
このため北海道の作品が発表されることはありませんでした。
でも、この展示方法は無い。
オリジナルプリントが無いなら、標準のままプリントし、本人のプリントでは無いことを断って展示すれば良かったのではないでしょうか。
正方形の部屋の壁3面にプロジェクターで映し出された映像を、「小島一郎と向き合う」という意識で見ることは、私には出来ませんでした。
 

降り続ける雪にじっと耐える「あおもり犬」
 

美術館を出る頃には、朝よりも酷い状況に。
撮影は全て
SONY DSLR-A100 (α100)
SONY 24-105mm/F3.5-4.5

*1:フィルムの番号とコマの番号でしょうか